ABMツールは、企業選定・提案準備・施策運用のどこを重視するかで選ぶ
ABMは、重点的に開拓する企業を定め、営業とマーケティングが連携して企業ごとにアプローチする取り組みです。企業を選ぶだけでなく、その社内の関係者や接点のつくり方まで考えます。SalesforceのABM解説
営業先が十分に見つからないなら、企業の収録範囲や検索条件が比較の中心になります。対象企業は決まっていても提案先や内容が定まらないなら、部署・人物の調査と提案準備の機能が重要です。企業別のメール配信や反応の計測を進めたい場合は、MAや施策運用の機能を見ていきましょう。
これらの機能は製品によって重なりがあり、複数のツールを組み合わせる方法もあります。すでに使っているCRM・SFAやMAと照らし合わせると、追加で必要な機能を絞り込めます。
ABMツールを比較する8つのポイント
同じ企業の情報を扱っていても、法人単位で整理する製品と、本社・支店・系列まで結び付ける製品では使い方が変わります。たとえば、大手企業の別事業所を開拓したい場合は、会社が検索結果に出るかだけでなく、取引のある本社と未取引拠点の関係を見られるかも判断材料になります。
次の8項目に優先順位を付け、自社に必要な情報と機能を比べましょう。
| 比較ポイント | 確かめたいこと |
|---|---|
| 自社の営業課題 | 営業先の開拓、提案先の調査、提案内容の作成、配信・計測のどこを改善したいか |
| 狙う企業の範囲 | 対象の業界・規模・企業・事業所を、必要な条件で検索できるか |
| 部署・人物情報 | 企業属性に加え、部署の役割、人物、連絡先をどこまで調べられるか |
| 情報の根拠と鮮度 | 出典や確認時点をたどれ、事実と仮説を区別できるか |
| 既存顧客との照合 | 表記ゆれや重複、本社・支店・系列をどのように整理できるか |
| 接触タイミングと方法 | 企業の変化や行動を参考にできるか。文面作成・配信・計測はどこまで対応するか |
| CRM連携と運用 | 連携先だけでなく、渡す項目、更新方向、権限、設定・保守の負担は合うか |
| 導入・継続にかかる費用 | 利用人数・利用量・追加契約・社内作業を含めた費用はいくらになるか |
部署・人物情報を使う際は、名前だけでなく所属や役割の根拠も確かめます。また、企業単位のWeb行動は接触タイミングの参考になる一方、特定の担当者の購買意思を直接示す情報とは区別が必要です。
ABMに使う7製品の比較表
まずは、主な用途と機能の対応を見ます。表は役割を整理したもので、記載のない機能が非対応という意味ではありません。連携先や利用条件は、各製品の紹介で説明します。掲載順は性能順位ではなく、実機での評価結果を示すものでもありません。
| 製品 | 主な用途 | 主な情報・機能 | 営業での使い方 |
|---|---|---|---|
| Sales Retriever | 大手企業への提案準備 | 企業・部署・人物調査、課題仮説・提案骨子、接点候補 | 商材に合わせて提案先と伝える内容を考える |
| SalesNow | 企業データの整備と対象選定 | 企業・組織情報、名寄せ、情報補完 | 社内外のデータをそろえて営業先を抽出する |
| ユーソナー | 企業・事業所を軸にしたデータ活用 | LBC、系列・事業所関係、名寄せ・補完 | 既存顧客と未開拓の企業・拠点を整理する |
| Sales Marker | シグナルに応じた対象選定・アプローチ | インテントデータ、シーケンス、メール配信 | 企業の動きに合わせて接触の順番・内容を組む |
| infobox | 自社データと外部情報を使った企業選定 | CRMデータ統合、組織・連絡先、インテント | 過去の接点を踏まえ、対象企業と提案を考える |
| HubSpot Marketing Hub | 対象企業の発見と企業別の施策管理 | ABM管理、Buyer Intent、広告・レポート | 企業の動きと顧客情報から注力先・施策を考える |
| Demandbase | 企業・購買関係者単位の分析・施策 | 関係者グループ、優先順位付け、CRM・施策連動 | 共通の対象企業に対する部門横断の活動を運用する |
各製品の特徴と向くケース
Sales Retriever商材に合わせた大手企業への提案準備
Sales Retrieverは、大手企業への個別提案に向けて、企業・部署・人物の調査と提案内容の準備を支援するAIです。自社商材の特徴や解決できる課題をもとに、誰に、なぜ今、何を伝え、どう接点をつくるかを組み立てます。
データベースとAIで組織図・部署番号・人物候補を調べ、課題仮説、提案骨子、手紙文面を作成します。引用元付きの連絡先候補調査や登壇者の横断検索にも対応し、商材と相手企業の状況から提案や参加イベントの候補を考えられます。機能紹介・サービス資料
Salesforce・HubSpotのリスト追加、問い合わせ、商談作成を契機に調査し、結果を格納する連携も資料に記載されています。導入時は、調査対象と利用量、企業・部署・担当者のどの情報をCRMへ渡すかを確かめます。
SalesNow社内外の企業データを統合し営業先を選定
SalesNowは、社内の顧客情報と外部の企業・組織情報をそろえて使う企業データ基盤です。営業先の抽出と顧客データの整備を進め、複数部門やシステムで共通の企業情報を参照したい企業に向いています。
企業属性、部署・組織、求人・ニュースなどの情報を扱い、社内データの名寄せや不足項目の補完に対応します。既存顧客と照合して営業先を抽出し、採用やニュースなどの変化を踏まえて対象リストを見直す使い方ができます。公式製品紹介
Salesforce・HubSpot・kintoneとの連携や、API・MCPによるデータ利用に対応しています。Salesforce向けでは画面内での情報参照・属性付与が可能です。カスタムAIエージェントとAIワークフローは別製品のため、本体のデータ活用と追加構成を分けて検討します。
ユーソナー企業・事業所の関係を踏まえた顧客データ統合
ユーソナーは、法人データLBCを使って顧客情報を整理・補完する顧客データ統合ソリューションです。本社には取引があっても別事業所は未開拓といった場面で、企業や拠点の関係を踏まえて営業先を探せます。
名寄せ、データ統合、属性補完に加え、系列・事業所の関係や企業情報を使ったリスト抽出に対応します。社内の取引先データを照合し、未取引の企業・事業所を整理して営業担当者へ渡せるため、顧客データの整備と開拓先の選定を一緒に進めたい企業に適しています。公式サービス紹介
連携先にはSalesforce、HubSpot、Marketo、kintoneなどがあります。選定時は、本社・支店・子会社をどう区別するか、どの項目で照合するかを整理したうえで、名寄せ・情報補完に必要なサービス構成を確かめましょう。
Sales Marker行動シグナルをアプローチの順番と内容に反映
Sales Markerは、企業属性に加え、検索やWeb上の行動シグナルを営業先の選定とアプローチに使うサービスです。企業の動きを参考に、接触する相手やタイミング、その後の働きかけを組み立てたい企業に向いています。
インテントデータを使った企業選定と、複数の手段を組み合わせるシーケンス機能を備えています。メール、電話、フォーム、手紙、広告の順番・条件や文面を設定でき、継続的なメール配信にも対応します。反応に応じて次の接触を考える運用が可能です。シーケンス・メール配信
Salesforceとは企業情報・シグナルの参照に加え、取引先・商談・活動情報を連携できます。対応プランと設定範囲、項目の更新方向や上書きの扱いを、利用中のCRMの運用と合わせて確かめましょう。公式連携案内
infobox自社の接点情報と外部データから次の営業先を選定
infoboxは、商談・取引・名刺など自社の接点情報と外部データを統合する営業データプラットフォームです。過去に接点がある企業の再検討と新たな営業先の選定を、共通の情報をもとに進められます。
企業検索、組織図・部署直通番号、Web行動データに加え、提案ストーリーの構築機能を備えています。求人タイトル検索では、キーワードに該当する求人を掲載する企業を抽出できます。過去の接点や企業の変化を踏まえ、連絡の理由と提案内容を考えたい企業に適しています。公式製品紹介
Salesforce・HubSpotなどのCRMと連携します。料金は初期費用と月額固定費で、契約期間・利用人数に応じたプランです。一部オプションは別料金となるため、取り込むデータと利用機能をそろえて見積もりを取りましょう。
HubSpot Marketing Hub企業の発見を施策・営業活動につなぐ
HubSpot Marketing Hubは、HubSpotの顧客情報をもとにマーケティング施策を運用するMAです。既存の接点を管理するほか、企業の動きから新たな注力先を探し、営業へつなげられます。
ABM機能ではターゲット企業や購入時の役割を管理し、広告セグメントやレポートに利用できます。Buyer Intentでは企業単位のサイト訪問、トピック調査、ニュースのシグナルを扱い、企業をCRMへ追加できます。企業の把握と施策を同じ基盤で進めたい場合に適しています。ABMガイド・Buyer Intent
ABM機能はMarketing HubまたはSales HubのProfessional・Enterpriseが対象で、一部にシート条件があります。Buyer Intentには別の利用条件があるため、必要な機能の契約・シートまたはクレジット条件を確認してください。
Demandbase企業と購買関係者を軸に部門横断の施策を運用
Demandbaseは、企業と購買に関わる関係者グループを軸に、営業・マーケティングの分析と施策をつなぐABMプラットフォームです。複数の買い手を踏まえ、部門間で注力先と活動をそろえたい企業に向いています。
適合度、エンゲージメント、購買シグナルを使って優先順位を付け、広告・Web・営業チャネルへ連動させます。役割別のメッセージやWebの出し分け、関係者情報を使ったCRM更新・施策連動にも対応します。製品紹介・施策連動ガイド
CRM・MAとの接続条件は公式連携一覧で確認できます。料金は基盤費用と利用者ごとの定額で、個別見積もりです。MarketingとSalesは一体提供となり、追加構成や国内データ、日本語支援の範囲は導入前の確認点です。
同じ企業・営業シナリオで試し、運用の違いを比べる
候補を絞ったら、同じ企業リストや営業シナリオを使ってデモ・試用を依頼しましょう。社内で利用が認められたデータを用い、検索結果だけでなく、提案や配信、CRMへの反映まで確かめることが大切です。
- 試す範囲を決める。 企業選定なら抽出から既存顧客の除外まで、提案準備なら部署・人物・連絡理由・提案内容までを対象にします。施策運用なら対象設定から実行・計測までを確認します。
- 結果と根拠を残す。 情報の出典や確認時点、人物・企業の扱いを記録します。確認した事実と、担当者が判断した仮説は分けます。
- 運用を一巡させる。 検索や生成だけでなく、人の確認・修正、CRMへの引き継ぎ、更新時の作業まで試します。機能があることと、自社で運用できることを分けて評価します。
- 条件をそろえて見積もる。 人数、データ量、期間、連携、追加機能、初期設定・支援をそろえ、社内に残る作業時間も比較します。
結果は「確認できた」「条件付き」「確認できなかった」「未検証」で記録します。試用範囲で使わなかった機能を、製品に存在しないと判断しないためです。ここで示した手順は選定方法の提案で、7製品の実測結果ではありません。