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【イベントレポート】富士通に学ぶ大手開拓の始め方、デジタルセールス立ち上げ時の落とし穴

本イベントについて

本イベントレポートでは、富士通株式会社のデジタルセールス組織立ち上げを題材に、プロジェクトが生まれた背景、立ち上げ期に直面した課題、商談品質を高めるための取り組み、既存営業との連携や社内浸透の進め方を整理しています。

2026年5月19日に開催した本イベントでは、『富士通に学ぶ大手開拓の始め方、デジタルセールス立ち上げ時の落とし穴』をテーマに、デジタルセールス組織の立ち上げ、Line of Business(LOB)部門への接点づくり、商談品質の見極め、既存営業との連携、社内浸透の進め方を掘り下げました。

登壇者

富士通株式会社 CRO室 Digital Sales Manager 重松 大介 氏

以下、富士通 重松さん

株式会社エムエム総研 執行役員 久保田 光就 氏

以下、エムエム総研 久保田さん

富士通株式会社 重松 大介 氏の登壇者紹介
株式会社エムエム総研 久保田 光就 氏の登壇者紹介

サービスサイト:

パネルテーマ

パネルテーマ

パネルディスカッションでは、以下の4つのテーマに沿って議論が進みました。

立ち上げのきっかけ・最初に取り組んだこと

立ち上げ直後に起きた想定外・失敗した出来事

どのように想定外・失敗から立て直したか

もう一度立ち上げするとしたらどうする?

プロジェクトが立ち上がった背景

立ち上げのきっかけ・最初に取り組んだこと

富士通 重松さん

「富士通でデジタルセールス組織の立ち上げが必要になった背景には、2020年前後の顧客接点の変化がありました。従来のIT企業の営業では、情報システム部門へのアプローチが中心でした。ただ、DXや業務変革のテーマが事業部門・現場部門にも広がる中で、情報システム部門だけでは顧客課題を捉えきれない状況が生まれていました。」

「同時に、富士通としては営業利益率10%を目指すという経営課題がありました。人員を増やして売上を伸ばすのではなく、フィールドセールスが受注活動に集中できる状態を作る必要がありました。そのために、デジタルセールスが新規キーパーソンの発掘、課題やニーズの把握、本気度の見極めを担う分業体制が必要になっていきました。」

「立ち上げにあたっては、エムエム総研 久保田さんに富士通のデジタルセールス支援の立ち上げから入っていただき、現在の運営支援にも継続して入っていただいています。2020年の段階で、2024年、2025年ごろまでの青写真を描きながら、富士通ならではの商材、組織、顧客構造に合うデジタルセールスモデルを検討していきました。」

「その後、2021年1月から6月ごろにかけてベンダーリソースを使ったPOC検証を進めました。営業向けアンケートを取り、フィードバックを資料化し、社内報として発信することで、社内の理解を少しずつ広げていきました。2021年7月には社員の初期メンバーアサインが始まり、2021年9月には私もデジタルセールスとして活動に加わりました。」

「つまり、このプロジェクトは単なる架電部隊の立ち上げではありませんでした。既存の営業が守ってきた大企業アカウントの中で、新しい部門、新しいキーパーソン、新しい課題を見つけにいくための組織づくりとして始まっていました。」

富士通ならではの難しさ

富士通ならではの難しさについて語る富士通 重松さん

富士通 重松さん

「富士通ならではの難しさとして、まず扱う商材の幅広さがあります。単一商材の会社であれば、同じ部門に対して同じ商材を提案し、事例化して横展開するという進め方ができます。一方で富士通の場合、SAPもあればSalesforceもあり、他社商材も自社商材もあります。顧客の課題に応じて、提案の切り口が大きく変わります。」

「社内の関係者も多岐にわたります。フィールドセールス、製品営業、マーケティング、SEなど、多くのステークホルダーと連携しながら進める必要があります。さらに、顧客側も大企業であるため、組織階層が深く、どの部門が何をしているのかを把握するだけでも簡単ではありません。」

「顧客企業の部門ごとの業務内容や課題をヒアリングしながら、アカウントの解像度を上げていくことが重要でした。単にアポイントを取るのではなく、顧客の組織構造を理解し、どこに新しい商談の可能性があるのかを探っていく活動だったと思います。」

エムエム総研 久保田さん

「富士通のモデルは、エンタープライズ企業がエンタープライズ企業を開拓する構造でした。商材も複雑で、顧客も複雑で、社内の連携も複雑です。その前提に立って、富士通ならではのデジタルセールスモデルを作る必要がありました。」

立ち上げ初期のロードマップ

エムエム総研 久保田さん

「立ち上げ初期に重視したのは、中長期のロードマップを描くことです。2020年の段階で、2024年、2025年ごろまでの青写真を描きました。新しい取り組みを始めるとき、目の前の業務に追われてしまい、将来像を考えることは後回しになりがちです。それでも、ダメ元でも一度未来を描くことが重要でした。」

「ロードマップがあることで、自分たちが当初想定していた状態に対して、今どこまで進んでいるのかを確認できます。進捗を確認できるからこそ、PDCAも回しやすくなります。逆にロードマップがなければ、どこに向かっているのかが分からなくなり、活動が場当たり的になってしまいます。」

「最初から大規模に展開するのではなく、まずはスモールサクセスを作ることにもこだわりました。社内の重要な営業メンバーや理解者を少しずつ増やし、その後に活動を広げていく。初期は小さく始めながら、後半で大きく伸ばせるように設計していました。」

富士通 重松さん

「組織の未来像を共有することは、チームの一体感にもつながりました。メンバーがそれぞれ別の方向を向いてしまうのではなく、自分たちはここに向かって進んでいる、という共通認識を持つことが、立ち上げ期には特に重要でした。」

ボトムアップで立ち上げる難しさ

ボトムアップでの組織立ち上げについて語るエムエム総研 久保田さん

エムエム総研 久保田さん

「トップダウンかボトムアップかという二択よりも、この取り組みを本気でやりたい人がいるかどうかが大事だと思います。思いを持った人がトップにいるならトップダウンで進めればよいし、現場側にいるならボトムアップで生き残る方法を考える必要があります。逆に、誰も本気でやりたいと思っていない取り組みは、なかなか前に進みません。」

「ボトムアップで進める場合、社内への説明は避けて通れません。現場の営業、部課長、部長、その上の役員層まで、あらゆるレイヤーに説明しに行きました。全方位外交のように、いろいろな人に理解してもらう必要がありました。」

富士通 重松さん

「ボトムアップで立ち上がった組織だからこそ、会社に価値を認めてもらえなければ組織自体がなくなる危機感がありました。だからこそ、小さな成功体験を積み重ね、それを事例化し、社内で発信していくことが重要でした。」

エムエム総研 久保田さん

「トップダウンで始めれば、最初のスタートは切りやすいかもしれません。一方で、現場が納得していなければ、活動は長続きしません。ボトムアップで始める場合は、最初から強い権限があるわけではないため、社内の理解者を一人ずつ増やしていく必要があります。」

立ち上げ直後に起きた想定外

立ち上げ直後に起きた想定外・失敗した出来事

エムエム総研 久保田さん

「立ち上げ直後に大きな課題となったのは、初期メンバーのアサインと育成でした。最初にどのような人をアサインすればよいのかが分かりませんでした。インサイドセールスやデジタルセールスといっても、富士通のような大企業でLOB部門への新規開拓を担う人材には、独自の適性が求められます。誰でもすぐにできる仕事ではありませんでした。」

富士通 重松さん

「当初は社内メンバーを育成していく計画がありました。ただ、本人が希望して異動しているわけではないケースもあり、モチベーションの維持が難しい部分がありました。新規開拓では、接点のない部署に電話やメールでアプローチし、断られながらもキーパーソンを探していく必要があります。精神的にも負荷の高い仕事です。」

「特に富士通の場合、それまで十分にやってこなかった、ど新規の開拓が求められました。接点のない部署にアプローチし、キーパーソンの業務内容、課題、ニーズ、商談の可能性をヒアリングしていく。既存顧客の中で新しい部門を開拓する活動であっても、実態としてはかなり新規開拓に近いものでした。」

エムエム総研 久保田さん

「立ち上げ期に必要な人材要件としては、IT x コミュニケーションだと思います。活動の中では多くのITツールを使うため、ITへの抵抗感がないことが必要です。同時に、初対面の相手に臆せず話せるコミュニケーション力も欠かせません。」

「製品知識や業界知識があれば理想的ですが、立ち上げ期には最初からすべてを求めすぎないことも重要です。ある程度人数も必要なので、ベースとなるメンバーの条件を冷静に決めることが大事です。加えて、デジタルセールスとして理想的な動きができる”ロールモデル”となり得る人物を早々に外部から採用することも重要でした。まさに重松さんがそうでした。このように、活動に必要な適性を見極めながら、それらを前提とした採用・育成スキームを組み立てていく必要がありました。」

商談品質の担保

富士通 重松さん

「エンタープライズ開拓では、アポイント数だけでは成果を測れません。特に富士通のように平均3000万円規模の商談を扱う場合、単に日程が取れたかどうかではなく、その商談が本当に前に進む可能性があるのかを見極める必要があります。」

「富士通では、商談進捗を”セールスステージ”と呼ばれる定義に則って管理しています。セールスステージは1から7まであり、ステージを上げていくためには越えなくてはいけない条件が決まっています。営業は受注を獲得するためにこのセールスステージを上げていく必要があります。なので、デジタルセールスも営業と目線をそろえるためにセールスステージを用いて商談品質を見ています。」

「デジタルセールスのミッションは、セールスステージ3と呼ばれる、いわゆるSQLに近い商談機会の創出でした。」

「ただし、デジタルセールスがフィールドセールスにトスアップするのはセールスステージ2と呼ばれる、まだ商談として提案を進められるかどうかを判断する手前の段階です。顧客に課題やニーズがあると判断できた時点でフィールドセールスに渡し、その後フィールドセールスが初回訪問を行い、継続的にアプローチすることが決まればセールスステージ3に移行します。そのため、初回アポイントから具体的な金額で検討が進む商談への移行率が品質を見るうえで重要な指標になっていました。」

「課題やニーズを聞いて終わりでは不十分です。その課題に対して顧客がどれくらい本気で取り組もうとしているのか、意思決定に関わる人に接点を持てているのか、部長以上など押さえるべき役職者を押さえられているのか。そうした観点が商談品質を判断するうえで重要でした。」

「ターゲティングの面では、年商1000億円以上の企業をベースにしていました。商談金額は商材によって異なるものの、平均で3000万円ほどです。だからこそ、単純なBANT確認だけでは足りません。」

エムエム総研 久保田さん

「数千万円規模の商談では、単にこの製品はいかがですか、という話にはなりません。顧客企業の組織課題や経営課題を理解し、その課題に対して富士通として何ができるのかを提案し、社内の合意形成を進めていく必要があります。大手企業向けのBDRでは、商談を作る段階からその深さが求められていました。」

イネーブルメントによる品質改善

想定外・失敗から立て直すための改善策

富士通 重松さん

「商談品質のばらつきを抑えるために、イネーブルメントチームを立ち上げました。結果を出すためには教育機能が重要だと考え、立ち上げ初期段階からイネーブルメントチームを作りました。エムエム総研にも入ってもらい、実際の音声ログを聞きながらフィードバックを行っていました。」

「フィードバックの内容は、単にトークスクリプトを直すだけではありません。どこをもっと深掘るべきか、どのタイミングであえて黙るべきか、顧客が話した課題に対して本当に取り組む意思があるのかをどう確認するか。実際の会話をもとに、細かく改善していきました。」

「全員が一度研修を受ければすぐに成果が出るわけではありません。定期的に研修を実施し、メンバーと泥臭くコミュニケーションを取りながら、少しずつ品質を上げていく必要がありました。」

既存営業との連携

富士通 重松さん

「大手企業の既存顧客を開拓するうえで、避けて通れないのが既存営業との連携です。基本的には富士通ユーザーの中でLOB開拓を進めていたため、営業からアカウントプランを共有してもらい、営業がすでに推進している領域と、デジタルセールスが新規で開拓したい領域を切り分ける必要がありました。」

「ただ、最初からスムーズに共有してもらえたわけではありません。既存営業からすれば、急に立ち上がった新しい組織が自分の担当顧客にアプローチすることになります。顧客との関係を守ってきた営業ほど、慎重になるのは自然なことです。」

「既存営業の数字目標にも構造的な難しさがありました。既存売上でも新規売上でも目標を達成できるのであれば、どうしても既存に注力しやすくなります。新規開拓は既存の3倍から5倍大変だと感じられることもあり、現場としては新規に積極的に向かいづらい状況がありました。」

「そこで、デジタルセールスの役割と価値を何度も説明しました。自分たちは何を担う組織なのか。顧客の生の声をどれだけ集められるのか。新規ビジネスの創出にどう貢献できるのか。そうした説明を100回以上繰り返しました。」

「転機の一つは、営業組織側に新規開拓への危機感が生まれたことでした。CROのトップが変わったタイミングで、KPIを3倍にするような方針が出たことで、既存だけでは達成が難しいという認識が広がりました。そこから、デジタルセールスへの依頼が少しずつ増えていきました。」

エムエム総研 久保田さん

「大企業の中で新しい組織が価値を発揮するには、成果を出すだけでなく、その価値を社内に伝え続ける必要があります。営業組織に理解されなければ活動は広がりません。だからこそ、既存営業との関係づくりは、立ち上げ初期の重要な仕事でした。」

Plan Bと社内ブランディング

エムエム総研 久保田さん

「立ち上げが常に順調だったわけではありません。最初から、必ずどこかでこけるという前提で計画を立てていました。新しい取り組みが最初から大成功することはほとんどありません。だからこそ、うまくいかなかった場合にどう立て直すのか、別の打ち手として何を用意しておくのか。常にPlan Bを考えていました。」

「営業組織に振り向いてもらうために、社内ブランディングにも力を入れました。営業向けにアンケートを実施し、NPSを取り、フィードバックを集める。そのコメントを資料化して営業に返す。社内報で展開する。YouTube動画を作る。そうした活動を通じて、デジタルセールスが何をしている組織なのかを伝え続けました。」

富士通 重松さん

「社内だけでなく外部発信も意識しました。NewsPicksに出る、外部イベントに登壇する、本やメディアで取り上げてもらう。社外で知名度を上げることが、結果的に社内での知名度向上にもつながりました。」

エムエム総研 久保田さん

「大企業の中では、社内で説明するだけでは届かないことがあります。外部で評価されることで、社内の見方が変わることもあります。富士通の立ち上げでは、社内発信と外部発信を組み合わせながら、新しい組織の存在意義を浸透させていきました。」

立ち上げの時系列

エムエム総研 久保田さん

2021年1月から3月、そして4月から6月ごろにかけて、まずはベンダーリソースを使ったPOC検証を進めました。この時期から営業向けのアンケートを取り、営業の方々からフィードバックを集めています。その内容をすぐに資料化し、2021年春ごろには社内報として発信していました。」

2021年7月には、社員の初期メンバーアサインが始まりました。ベンダーだけでなく社員も活動していく段階に入ったものの、すぐにうまくいったわけではありません。教育が追いつくまでの間はベンダーが活動を支えつつ、外部採用も進めていきました。」

2021年10月ごろにはYouTube動画も出し始めています。その後、外部のアワードで表彰され、2022年、2023年ごろにはNewsPicksやユーザベースなどでの露出も増えていきました。」

「立ち上げは一気に進んだわけではありません。POC、営業フィードバック、社内報、社員アサイン、外部採用、YouTube、外部メディア露出という順番で、少しずつ組織の正当性と認知を積み上げていきました。」

エンタープライズ開拓組織を作るうえで重要なこと

富士通 重松さん

「富士通のデジタルセールス組織の立ち上げから見えるのは、大手企業開拓はアポイントを取る活動だけでは成立しないということです。情報システム部門だけでなく、LOB部門への接点を作る。顧客の組織構造を理解し、キーパーソンを探し、課題や本気度を見極める。商談品質は、初回アポイントから具体的な金額で検討が進む商談への移行率、部長以上の役職者との接点、組織課題や経営課題の深さで見る。さらに、既存営業との連携や社内での価値浸透も必要になります。」

エムエム総研 久保田さん

「エンタープライズ開拓組織の立ち上げには、営業成果と社内浸透の両方が欠かせません。新しい組織は、作っただけでは動きません。ロードマップを描き、スモールサクセスを作り、商談品質を磨き、営業組織に価値を伝え続ける。その積み重ねによって、ようやく大手企業開拓の仕組みが形になっていきます。」

富士通の取り組みとエムエム総研の支援

富士通の実践知を他社へ展開し、日本企業の営業改革へ

富士通では、デジタルセールス組織の立ち上げと運営で得た実践知を社内に閉じず、顧客企業の営業変革にも展開しています。顧客企業の営業変革に活かす新たな価値創出に向けて、富士通の実践知をコンサルティングとして提供し、日本企業の営業改革を後押しする取り組みです。

富士通の取り組みに関心がある方は、[email protected] までお問い合わせください。

エムエム総研の内製型インサイドセールス組織の構築・変革支援

サービスサイト:

エムエム総研では、内製型インサイドセールス組織の構築・変革支援として、活動設計、組織化、研修・トレーニング、リスキリング、実行人材提供までを支援しています。各社の現状や課題、目的に合わせて、独自のオリジナルプランを策定し、営業組織の立ち上げと成長を伴走します。

次回イベントのご案内

6月16日開催:富士通に学ぶ大手開拓の始め方 Vol.2

2026年6月16日(火)18:30より、富士通株式会社と株式会社エムエム総研を再びお招きし、『富士通に学ぶ大手開拓の始め方 Vol.2 デジタルセールスのマネジメントと組織変革』を開催します。

前回の立ち上げフェーズから一歩進み、デジタルセールス組織を継続的に成果へつなげるためのマネジメント、営業現場への定着、組織変革の進め方を掘り下げます。