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【イベントレポート】富士通に学ぶ大手開拓の始め方 Vol.2 デジタルセールスのマネジメントと組織変革

本イベントについて

本イベントレポートでは、2026年6月16日に開催した 『富士通に学ぶ大手開拓の始め方 Vol.2 デジタルセールスのマネジメントと組織変革』 の内容をもとに、富士通株式会社のデジタルセールス組織が、立ち上げ後にどのように役割を広げ、エンタープライズ開拓の仕組みとして定着していったのかを整理します。

5月19日に開催した第1回では、デジタルセールス組織の立ち上げ期に起きた課題や、最初に直面した落とし穴を中心に扱いました。今回の第2回では、その先のテーマとして、FY2022〜2024の活動安定化・拡大期におけるマネジメントと組織変革 を中心に掘り下げています。

登壇者

富士通株式会社 CRO室 Digital Sales Manager 重松 大介 氏

以下、富士通 重松さん

株式会社エムエム総研 執行役員 ビジネストランスフォーメーション第1Div. Division長 久保田 光就 氏

以下、エムエム総研 久保田さん

Sales Retriever株式会社 代表取締役 松本 成行(モデレーター)

今回のトークテーマ

今回のトークテーマ

本イベントは、富士通のデジタルセールス組織に関する全3回シリーズの第2回として実施しました。第1回では、FY2020〜2021の組織立ち上げ、初期の成功と拡大を中心に扱いました。第2回となる今回は、FY2022〜2024の活動安定化から拡大期を中心に、マネジメントと組織変革をテーマにしています。

パネルテーマ

パネルテーマ

パネルディスカッションでは、以下の4つのテーマに沿って議論が進みました。

立ち上げ後に求められた変革の背景

テリトリー戦略とプランニングの重要性

質を維持し続けるための仕組み化・ツール活用

戦力化させるための育成・チーミング

立ち上げ後に求められた変革の背景

立ち上げ後に求められた変革の背景

富士通 重松さん

「富士通がデジタルセールスに取り組む背景には、2019年にIT企業からDX企業へ変わっていく という大きな方針転換がありました。従来の営業活動では、既存のお客様や情報システム部門との関係が中心でした。ただ、DXのテーマが事業部門や現場部門にも広がる中で、従来の接点だけでは新しい課題を捉えきれない状況が出てきました。」

「外資企業やスタートアップも含めて競争環境が変わり、既存ビジネスだけでは成長を維持しづらくなっていました。その中で、富士通として新規の部門やキーパーソンに接点を作り、新しいビジネス機会を見つけにいく組織として、デジタルセールスが立ち上がりました。」

「第1回でお話ししたように、立ち上げ期には新規オポチュニティを作ることが大きなテーマでした。一方で、組織が動き始めると、単にアポイントを取るだけではなく、既存商談を前に進め、受注に近づける役割 も求められるようになりました。」

「富士通で扱っている商談は、数千万円から1億円規模になるものもあります。導入までに2年、3年かかることもあります。そのため、新しいアポイントを作ったとしても、すぐに今期の数字に直結するわけではありません。」

「そこで、デジタルセールスには新規接点を作るだけでなく、フィールドセールスが進めている商談の周辺で、別部門や上位レイヤーに接点を広げる役割も求められるようになりました。商談を前に進めるために、顧客の組織内で誰が関係しているのか、どの部署に課題があるのかを明らかにしていく必要がありました。」

エンタープライズ開拓の役割変化を語る富士通重松さん

富士通 重松さん

「エンタープライズ企業では、ひとつの商談に多くのステークホルダーが関わります。会える人に会い続けるだけでは、商談が前に進まないことがあります。」

「そこで重要になるのが、上位レイヤー、現場部門、関連部門へ縦・横・斜めに接点を広げる 3Dアプローチ です。既存営業が会えている相手の一つ上のポジションに接点を作る。現場部門から生の声を集める。複数部門の課題をつなぎ合わせて、経営課題に引き上げる。こうした動きが必要になります。」

3Dアプローチとは

「大手企業の商談では、ひとりの担当者だけを押さえても意思決定は進みません。部門をまたいで課題を把握し、買う理由を組織の中で作っていくことが、デジタルセールスの重要な役割になっていきました。」

テリトリー戦略とプランニングの重要性

テリトリー戦略とプランニングの重要性
プランニング

エムエム総研 久保田さん

「富士通のデジタルセールスが社内から信頼を得るためには、成果を出すだけでなく、テリトリー戦略とプランニングを自分たちで考えていること が重要でした。営業から依頼されたリストに電話するだけでは、なかなか対等なパートナーにはなれません。」

「起点になるのは、フィールドセールスが持っているアカウントプランです。企業概況、競合分析、狙いたい商談、今期のアプローチ方針を読み解き、営業が注力する領域を理解した上で、デジタルセールスとして貢献できる領域を見定め、営業側とすり合わせの上、ホワイトスペースを中心としたデジタルセールスの活動領域を決めていきます。」

「そのうえで、どの部門に、どのテーマで、どの商材を訴求するのかを個社ごとに設計します。富士通の場合、商材数が非常に多いため、商材に詳しい専門人材がプランニングに入ることも重要でした。」

「大手企業を攻略するうえでは、営業担当者の感覚だけに頼るのではなく、アカウントプラン、組織図、パワーストラクチャー、既存接点、商談テーマを並べて、攻略できていない余白はどこにあるのか を見える化する必要があります。そこまで整理できて初めて、デジタルセールスが動くべき部門やキーパーソンが明確になります。」

プランニングについて語るエムエム総研久保田さん

富士通 重松さん

「富士通にはもともと 3000種類規模 の商材がありました。そこから300種類、さらに100以下へと絞り込みながら、現場で扱いやすい形にしていきました。営業の要望を受けるだけでなく、デジタルセールス側から『この部門にはこの商材も提案できるのではないか』と逆提案することもあります。」

富士通 重松さん

「企業規模によって運営も分けています。年商1000億円以上 の企業は業種別に分け、アカウント起点で進めます。一方で、1000億円以下の領域では、特定商材を特定部門へ展開する商材起点のアプローチを取っています。」

「営業とターゲット企業の攻略方針を握ったうえで、デジタルセールスとしてどの部門をどう攻略するのかを決める。これが、受注につながる商談を作るうえで重要でした。」

エムエム総研 久保田さん

「デジタルセールスが成果を出すには、活動量だけではなく、どの仮説で、どの部門に、どの順番で接点を作るのかを決めることが重要です。プランニングを丁寧に行うことで、フィールドセールスから見ても、単なる架電部隊ではなく、アカウント攻略を一緒に進める存在として見てもらえるようになります。」

質を維持し続けるための仕組み化・ツール活用

質を維持し続けるための仕組み化・ツール活用
デジタルツールを駆使した活動

富士通 重松さん

「現在の富士通のデジタルセールス組織は、国内インサイドセールス、海外インサイドセールス、ストラテジー機能を含めて 約150名規模 まで拡大しています。」

「ストラテジー機能には、オンボーディングや育成、活動施策の提案支援、組織戦略、データドリブン・データマネジメント、ビジネスオペレーションが含まれます。単にプレイヤーを増やすだけではなく、活動を支える仕組みも一緒に作っていく必要がありました。特に、立ち上げ初期からイネーブルメント機能やプランニング機能を自組織内に作ったことが、早期立ち上げに大きく貢献したのではと感じています。」

富士通 重松さん

「活動を仕組み化するうえでは、用途ごとに複数のツールを組み合わせています。企業調査には Speeda、部署番号調査には Sales Retriever、電話には amptalk、初回面談には Teams、接点情報には SansanEight、SNS接触には LinkedInFacebook、会話記録と営業連携には OneCRM を使っています。」

「活動フローとしては、まずアカウントプランを理解し、セールス領域とデジタルセールス領域を分けます。そのうえで組織図や人脈マップを作り、電話番号や接点情報を取得してアプローチしていきます。」

「商談化しなかったリストも終わりにせず、人を変え、品を変え、時期を変える ことでナーチャリングします。新規商談の創出だけでなく、クローズ案件の再考や、停滞商談の前進にもつなげていきます。」

「接触チャネルの比率でいうと、7割が電話、2.5割がSNS・メール、0.5割がCXOレター です。役員接点が必要な場合や、現場課題を経営課題に接続できる仮説が立った場合には、秘書経由のレターも活用しています。」

エムエム総研 久保田さん

「ツールを導入するときに大事なのは、ツール単体で考えないことです。調査、接点取得、架電、商談記録、VoC(Voice of Customer)の蓄積までを一連の活動として設計し、どの情報をどのように残すのかを決めておく必要があります。そこが曖昧だと、せっかく取得した情報が適切に蓄積されず次の活動に活かされません。」

富士通 重松さん

「デジタルセールスの価値は、アポイント数だけでは測れません。顧客との会話内容をCRMに蓄積し、amptalkで文字起こしし、テンプレートに沿ってAIがカテゴリ分類することで、電話終了時点でログができる状態を作っています。」

「さらに、蓄積したVoCをAIで分析し、業界トレンドや商談示唆として営業へ還元しています。たとえば、時事テーマについて顧客に問いかけ、そこから得た声をもとに、IT投資や業務課題の兆しを読み取り、提案の材料にすることもあります。」

「営業から見たときに、デジタルセールスが単にアポイントを取ってくるだけの組織ではなく、顧客の声や市場の変化を持ち帰ってくる組織だと伝わることが重要でした。」

戦力化させるための育成・チーミング

戦力化させるための育成・チーミング
ベースとなる考え方

エムエム総研 久保田さん

「組織が大きくなるほど、活動品質のばらつきは避けられません。だからこそ、成果から逆算して必要な人物像を定義し、組織戦略やマネジメント方針、人を育てる仕組みとなるイネーブルメントなどを設計することが重要です。」

「誰にでも同じ研修を行えばよいわけではありません。富士通のデジタルセールスとして、どのようなマインド、スキル、行動が必要なのかを明確にし、それを育成の仕組みに落とし込んでいく必要がありました。」

「特に重要なのは、組織としての方針や行動指針を明示した上で、その中で成果を出す”ハイパフォーマー”はいったいどのような思考・行動特性を持っているのかを言語化して、再現できる形にすることです。マインドやスキル、研修、そして実務といったそれぞれの要素を、バラバラに考えるのではなく、常に成果を出し続けられる組織になれるように、すべてを連動して設計する必要があります。」

エムエム総研 久保田さん

「富士通では、最初の約1か月でマインド、スキル、ロープレを集中的に学び、その後にOJTへ進みます。ロープレは 13項目程度 の基準で評価し、OJTにも専用KPIを設けて卒業を判断しています。」

「オンボーディングは 2〜3か月に1回程度 実施され、イネーブルメントチーム、トレーナー、講師、外部メンターが連携して育成を支えています。」

質疑応答

Q:これから新規を立ち上げていくが、会社の特性上3年でメンバーの異動が発生してしまう。そのような状況で、今日の話を踏まえて何ができるか?

エムエム総研 久保田さん

「少人数組織でも取り入れやすいこととして、まず 会話を録音して残すこと があります。顧客の悩みを聞き、ターゲティングやシナリオを作り、現状課題と導入メリットを高い解像度で整理することは、組織規模に関わらず実践できます。」

「最初から大きな仕組みを作る必要はありません。まず顧客との会話を残し、そこから学び、次のアプローチに反映する。これだけでも活動品質は上げられます。」

「育成の仕組みは、研修を実施して終わりではありません。録音や商談ログを見ながら、どの部分でつまずいているのかを確認し、個人ごとにフィードバックすることが大切です。組織として型を作りながら、個人の強みを活かす設計にしていくことが、継続的な戦力化につながります。」

富士通 重松さん

「富士通のデジタルセールスでは、パーパス、ビジョン、チームプリンシプル、コンピテンシー、スキルを一連で言語化しています。特に重視しているのは、コーチャブルさグロースマインドセット です。」

「自分の苦手や弱みをどれだけ自己開示できるか。マネージャーや幹部も含めてオープンに話せるか。そうした文化が、チームづくりの基盤になります。」

Q:営業に対してできる支援とはどういうものか?

富士通 重松さん

「フィールドセールス支援では、停滞商談のボトルネックを埋めるためにバディで動くこともあります。停滞理由は、タイミングの問題、会えている相手のレイヤーが違う、提案テーマがずれている、の3つに整理できます。」

「デジタルセールスは、ここを補うことで商談を前に進める役割を担えます。新規開拓だけでなく、既存商談を前に進める支援にも価値があります。」

今後の展開

富士通 重松さん

「富士通としては、自社で立ち上げてきた実践知をコンサルティングとして他社へ展開していく方針も共有しています。苦労して立ち上げた組織の知見をノウハウ化し、同じ課題に向き合う企業の営業改革に役立てていきたいと考えています。」

富士通の実践知を他社へ展開

エムエム総研 久保田さん

「エムエム総研としては、アウトソースではなく、企業が自らデジタル組織を立ち上げられるようにする 内製化支援 を重視しています。組織づくり、人材、キャリア、スキリングを支援し、営業DXの皮をかぶった組織開発支援として、組織変革に伴走していきます。」

エムエム総研の内製型インサイドセールス組織の構築・変革支援

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